墨子と実篤

墨子の兼愛・交利説は博愛・平和主義とも解され、理想主義の実篤に近いと思われるかもしれない。だが実篤が墨子をどう評価していたかは、読んだことがないため、何とも言えない(全集にも入っていない)。戦前の仕事がない時代に、偉人の伝記を書いていた中の一編で、題材に選んだからには興味はあったと思うが…。その後の人生論などで孔子はよく紹介されたが、墨子の名前を見かけることはなかったと思う。
私は実篤を読み始めた中学高校のころに、墨子にも興味を持って、わからないなりに読んでみた。が、当時は実篤の理想主義的な一面しか見ていなかったのと同様に、墨子にも理想主義的なものしか見ていなかったのだと思う。今読めば一筋縄ではいかないしたたかさを読むことができるのではないだろうか。

墨子よみがえる』のまえがきで紹介されていた、幸田露伴の「墨子」は、青空文庫に収録されていた。