NHKアーカイブスの解説への疑問

NHKアーカイブスの実篤の回、第1回は無事録音できた。実篤のインタビューを放送する前の解説を聴き返しているが、2つ気になる点がある。
1つ目は、「武者小路」の読み方について。大村氏は「ムシャノコウジが正しいが、世間一般がムシャコウジと言うようになったので、どちらでもよいとした」と話している。
「武者小路=ムシャノコウジ」というところまでは良いが、「ムシャコウジ」としたのは、実篤自身のはずである。これについては、実篤記念館のホームページに記載がある。結果として、ムシャノコウジでもムシャコウジでもどちらでもよいとしたというところは同じだが、途中がおかしくなっている。辞書も、文庫本の奥付もムシャノコウジとなっているのに、「世間一般がムシャコウジと言うようになった」というのはおかしい。

2つ目は、「学習院の講演会で、乃木大将の殉死には人類的なところがないと言った」という話。これもおかしい。
実篤が学習院の高等科を卒業後、母校に招かれて講演をしたことは事実である(1907年6月4日)。そのときの演題は「人間の価値」で、当時校長(院長と呼んだ)だった乃木希典を前に「軍人は人間の価値を知らない」という意味のことを言ったというエピソードがある(『実篤全集』第18巻、年譜参照)。
また、実篤は乃木大将の殉死について「ゴッホの自殺と比べて、人類的なところがない」と文章に書いている。これと先の講演会が混同されてしまっている。さすがに乃木の殉死後に、校長を務めた学校へ行って、その死について非難がましいことを言うなどという非常識な行為は、実篤ならずとも普通しないだろう。
知らない人が聞くと信じてしまうかもしれないので、書いておく。