「『友情』を読む」(実篤記念館)

昨日の午後、実篤記念館の読書講座「『友情』を読む」に参加してきた。講師は瀧田浩先生(二松学舎大学)、会場は調布市東部公民館和室。予想に反して10名弱のこじんまりとした講座だったが、「友情」を「お目出たき人」などと比較した興味深いお話だった。
現在では「友情」は実篤の代表作と目されているが、実篤自身は自信作とは思っておらず、むしろ「人間万歳」や「愛慾」、山谷五兵衛ものに自信を持っていた。それなのに戦後亀井勝一郎が青春の書として持ち上げ、戦後の欲望があからさまな文学に対抗する形で清純・純潔の文学として支持されてきたと言う。
ジラールの「欲望の三角形」やセジウィックホモソーシャル論などを紹介しながら、漱石の「こころ」との違いなども説明された(杉子が強く立ち上がることで三角形が成立したところが「こころ」との違い)。
ミステリーのように細部がよくできているのも、例を見ていくととてもおもしろかった。海辺で杉子の歌に気づくシーンや、それぞれを見初めた時期の違いなど、他の実篤作品にないぐらいよくつくられている。
次は10/16(日)の寺澤先生(文教大学)の文学講座だ。こちらも楽しみにしている。